ニザヴェッリルとは?北欧神話のドワーフの国と宝物を解説

北欧神話のニザヴェッリルをイメージした山岳都市で、ドワーフが鍛冶をする様子と黄金の指輪や槌などの宝物を描いたアイキャッチ画像。「ニザヴェッリルとは?北欧神話のドワーフの国と宝物を解説」と書かれている。 神話・歴史
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ニザヴェッリルは、北欧神話の古い詩『巫女の予言』に登場する場所です。一般にはドワーフたちが住む地下世界として知られていますが、原典に書かれている内容はとても短く、北方にシンドリ一族の黄金の館があると語られるだけです。

地下に広がる鉱山や鍛冶場、スヴァルトアールヴヘイムと同じ世界だという説明は、複数の資料や後世の解釈を組み合わせて整理されたイメージです。

この記事では、ニザヴェッリルについて原典から分かることと、後世に広まった解釈を分けながら、北欧神話のドワーフや神々の宝物との関係を解説します。

ニザヴェッリルの基本情報

北欧神話のニザヴェッリルをイメージした山岳都市と鍛冶場で、ドワーフが金属を鍛える様子を描いた見出し画像。「ニザヴェッリルとは?最初に要点を確認」と書かれている。
項目内容
古ノルド語Niðavellir
登場する原典『詩のエッダ』所収『巫女の予言』
原典での描写北方にシンドリ一族の黄金の館が立つ場所
住人シンドリ一族。一般にはドワーフの一族と解釈される
名前の意味暗い野、低い野など諸説ある
場所原典では詳しい位置や地下世界とは明記されない
スヴァルトアールヴヘイムとの関係同一視されることが多いが、原典では別名と明記されない

ニザヴェッリルを理解する際に大切なのは、原典の記述と、現代に普及している世界設定を分けて見ることです。

 

『巫女の予言』に登場するニザヴェッリル

北欧神話の『巫女の予言』をイメージした書物と巫女、黒い鳥、山岳都市や鍛冶場を描いた見出し画像。「『巫女の予言』に登場するニザヴェッリル」と書かれている。

ニザヴェッリルという名前は、『詩のエッダ』に収められた『巫女の予言』に登場します。

詩では、北方のニザヴェッリルに、シンドリの一族に属する黄金の館が立っていると語られています。版や翻訳によって節番号や地名の表記には違いがありますが、ニザヴェッリルについて原典から直接読み取れる中心的な情報は、この黄金の館です。

現在よく見かける次のような説明は、この短い詩だけにすべて書かれているわけではありません。

  • 地下に広がる大きな王国
  • ドワーフの鉱山や工房が並ぶ世界
  • ユグドラシルの根元にある国
  • 九つの世界の一つとして固定された場所

これらは、ドワーフが岩や地中と結びつけられる伝承、『散文のエッダ』に登場するスヴァルトアールヴヘイム、現代の神話解説や創作作品などが重なって生まれたイメージと考えられます。

 

ニザヴェッリルと北欧神話の九つの世界

北欧神話の世界樹ユグドラシルと九つの世界、山岳都市ニザヴェッリルで鍛冶をするドワーフたちを描いた見出し画像。「ニザヴェッリルと北欧神話の九つの世界」と書かれている。

ニザヴェッリルは、北欧神話の九つの世界の一つとして紹介されることがあります。ただし、エッダには九つの世界を現代の地図のように整理した共通の一覧がありません。

資料によって、ニザヴェッリルとスヴァルトアールヴヘイムを同じ世界として数える場合と、別の場所として扱う場合があります。ニヴルヘイムとヘルの扱いにも違いがあるため、九つの名称は解説書や作品によって変わります。

そのため、ニザヴェッリルを九つの世界の一つと説明する場合は、一般的な分類の一例として捉えるのがよいでしょう。

世界樹と九つの世界については、以下の記事で全体像を解説しています。

世界樹ユグドラシルとは?北欧神話の九つの世界・3つの泉・動物を解説

 

原典から見るニザヴェッリルの場所

北欧神話の原典をイメージした古い書物や地図、コンパスと、山岳都市ニザヴェッリルを組み合わせた見出し画像。「原典から見るニザヴェッリルの場所」と書かれている。

『巫女の予言』では、ニザヴェッリルは北方にあると語られます。しかし、地下にある、ユグドラシルの特定の根の下にあるといった詳しい地理は示されていません。

ドワーフは石や岩山、地中の住まいと結びつけて描かれることが多いため、後世にはニザヴェッリルも地下世界として表現されるようになりました。

北欧神話の世界は、作品ごとに少しずつ異なる伝承を一枚の地図に固定できるものではありません。ニザヴェッリルについても、北方にある黄金の館の地という原典の描写を土台にしながら、地下のドワーフ世界という広く知られた解釈が加わったと見ると分かりやすくなります。

ニザヴェッリルとスヴァルトアールヴヘイムの違い

北欧神話のニザヴェッリルとスヴァルトアールヴヘイムを左右に対比し、鍛冶をするドワーフの国と暗い地下世界を描いた見出し画像。「ニザヴェッリルとスヴァルトアールヴヘイムの違い」と書かれている。

スヴァルトアールヴヘイムは、『散文のエッダ』に登場する場所です。名前は「黒いエルフの国」と訳されますが、そこに住む者たちはドワーフと重なる存在として描かれています。

『散文のエッダ』では、神々がフェンリルを縛る魔法の紐グレイプニルを作らせるため、使者スキールニルをスヴァルトアールヴヘイムのドワーフたちのもとへ送ります。

一方、『巫女の予言』に登場するのがニザヴェッリルです。両者はドワーフと関係するため同じ世界と解釈されることが多いものの、原典に「二つは同じ場所の別名」と明記されているわけではありません。

名称主に登場する資料原典で確認できる内容
ニザヴェッリル『巫女の予言』北方にシンドリ一族の黄金の館がある
スヴァルトアールヴヘイム『散文のエッダ』ドワーフたちがグレイプニルを作った場所

神話をもとにしたゲームや物語では、世界観を分かりやすくするため、どちらか一方の名称に統一されることもあります。

北欧神話に登場するドワーフ

北欧神話のドワーフたちが鍛冶や細工を行う様子と、ニザヴェッリルを思わせる山岳都市や宝物を描いた見出し画像。「北欧神話に登場するドワーフ」と書かれている。

北欧神話のドワーフは、古ノルド語でドヴェルグと呼ばれる存在です。『巫女の予言』や『散文のエッダ』では、モーツォグニルやドゥリンをはじめ、多くのドワーフの名前が挙げられています。

『散文のエッダ』では、ドワーフは原初の巨人ユミルの体内に生じたものから知性と人の姿を与えられ、土や岩の中で暮らすようになったと説明されます。

現代のファンタジーでは、小柄で力強い鉱夫や鍛冶職人という姿が定番です。北欧神話にも優れた品を作るドワーフは登場しますが、すべてのドワーフが同じ性質や職業を持つと説明されているわけではありません。

シンドリとブロックが作った神々の宝物

北欧神話の鍛冶職人シンドリとブロックが炉の前で武具や宝物を鍛える様子と、ミョルニル、ドラウプニル、グングニル、グリンブルスティなどを描いた見出し画像。

『散文のエッダ』の『詩語法』には、ロキとドワーフたちが関わる神々の宝物の物語があります。

ロキは、ドワーフであるイーヴァルディの息子たちにシヴの黄金の髪などを作らせます。その後、ブロックに対して、兄弟のシンドリはそれ以上の宝物を作れないだろうと自分の頭を賭けました。

この競争から、北欧神話を代表する六つの宝物が生まれます。

作り手宝物所有する神特徴
イーヴァルディの息子たちシヴの黄金の髪シヴ頭につけると本物の髪のように育つ
イーヴァルディの息子たちグングニルオーディン狙いを外さない槍
イーヴァルディの息子たちスキーズブラズニルフレイ折り畳んで持ち運べる船
シンドリとブロックドラウプニルオーディン9夜ごとに同じ重さの腕輪を八つ生み出す
シンドリとブロックグリンブルスティフレイ金色の剛毛が輝く猪
シンドリとブロックミョルニルトール投げても持ち主の手へ戻る槌

ロキの妨害によってミョルニルの柄は短くなりました。それでも神々は、巨人から神々を守る力を持つミョルニルを最高の宝物と評価します。

なお、この物語の鍛冶場がニザヴェッリルにあったとは原典に明記されていません。ニザヴェッリルにシンドリ一族の館があるという『巫女の予言』の記述と、シンドリが宝物を作る『散文のエッダ』の物語が結びつき、ニザヴェッリルが巨大な鍛冶の国として想像されるようになったと考えられます。

ドワーフが作った魔法の紐グレイプニル

北欧神話のドワーフたちが鍛冶をするニザヴェッリルの工房と、魔法の紐グレイプニルに拘束されたフェンリルを描いた見出し画像。「ドワーフが作った魔法の紐グレイプニル」と書かれている。

神々の宝物には、フェンリルを縛ったグレイプニルもあります。

『散文のエッダ』によると、グレイプニルはスヴァルトアールヴヘイムのドワーフたちが作りました。材料として挙げられるのは、猫の足音、女性のひげ、山の根、熊の腱、魚の息、鳥の唾液という、普通には存在を確認できない六つのものです。

細く柔らかい紐に見えながら、フェンリルにも破れない強さを持っていました。

今後作成するフェンリルの記事からも、この項目へ内部リンクをつなげられます。

ニザヴェッリルとユグドラシルの関係

北欧神話の世界樹ユグドラシルと、その根元に広がるニザヴェッリルの山岳都市や鍛冶をするドワーフたちを描いた見出し画像。「ニザヴェッリルとユグドラシルの関係」と書かれている。

ニザヴェッリルがユグドラシルの根元にある、ドワーフたちが根を守っているという説明を見かけることがあります。しかし、エッダにはその役割を示す記述がありません。

ユグドラシルの根や泉として具体的に語られるのは、神々のいる場所、霜の巨人のいる場所、ニヴルヘイムなどです。ニザヴェッリルとユグドラシルの位置関係は明らかにされていません。

世界樹の根をかじる存在として知られているのはニーズヘッグです。ニーズヘッグとラグナロクについては、以下の記事で詳しく解説しています。

ラグナロクの生き残りは誰?人間と神々、ニーズヘッグの解釈を整理

ラグナロクにおけるドワーフとニザヴェッリル

北欧神話のラグナロクをイメージした炎と戦火の世界で、ニザヴェッリルのドワーフたちが武器を手にする様子を描いた見出し画像。「ラグナロクでドワーフとニザヴェッリル」と書かれている。

『巫女の予言』では、ラグナロクが迫るなか、ドワーフたちが石の扉の前でうめく様子が描かれます。しかし、ドワーフたちが神々とともに戦った、地下へ逃れて生き残った、ラグナロク後も宝物を作ったという具体的な結末は語られていません。

また、ユグドラシルはラグナロクの際に震え、炎にさらされますが、完全に崩壊したと断定できる記述はありません。

原典から分かる範囲では、ラグナロクの脅威はドワーフの世界にも及んだものの、ニザヴェッリルと住人たちの最終的な運命は不明です。

ゲームや物語に登場するニザヴェッリル

北欧神話のニザヴェッリルをもとにした幻想的なドワーフの都市や鍛冶場、地図や武具を組み合わせ、ゲームや物語へ広がった世界観を表現した見出し画像。「ゲームや物語に登場するニザヴェッリル」と書かれている。

現代の作品では、ニザヴェッリルはドワーフの高度な鍛冶技術を象徴する世界として描かれます。

マーベル作品では、ニザヴェッリルは強大な武器を生み出すドワーフの鍛冶場として設定されています。これはシンドリやブロックが神々の宝物を作った北欧神話の物語を、宇宙規模の世界観へ発展させた表現です。

『ゴッド・オブ・ウォー ラグナロク』では、ドワーフと関係する世界にスヴァルトアールヴヘイムという名称が使われています。ニザヴェッリルとスヴァルトアールヴヘイムを同一視する解釈を知っていると、作品ごとの名称の違いも楽しめます。

ゲームや映画のニザヴェッリルは、原典の短い描写をもとに大きく広げられた創作世界です。原典と作品を比べてみると、黄金の館や鍛冶の名人という要素が、現代の物語でどのように育ったのかが見えてきます。

ニザヴェッリルに関するよくある質問

北欧神話のニザヴェッリルをイメージした山岳都市と古書、鍛冶道具を背景に、場所・スヴァルトアールヴヘイムとの違い・ドワーフ・ユグドラシル・ラグナロク・ゲーム作品との関係など、よくある質問をまとめた見出し画像。

ニザヴェッリルとは何ですか?

北欧神話の『巫女の予言』に登場する場所です。北方にシンドリ一族の黄金の館があると語られ、一般にはドワーフの国として知られています。

ニザヴェッリルは地下にありますか?

原典には地下にあると明記されていません。ドワーフが岩や地中と結びつくことから、後世には地下世界として描かれるようになりました。

ニザヴェッリルとスヴァルトアールヴヘイムは同じですか?

同じドワーフの世界として扱われることが多いものの、原典では同じ場所の別名とは明記されていません。それぞれ異なる資料に登場します。

ニザヴェッリルは九つの世界の一つですか?

現代の一般的な一覧では九つの世界の一つに数えられることがあります。北欧神話の原典には九世界の固定一覧がないため、スヴァルトアールヴヘイムとの数え方は資料によって異なります。

ミョルニルはニザヴェッリルで作られましたか?

ミョルニルをシンドリとブロックが作ったことは『散文のエッダ』に記されています。ただし、鍛冶場がニザヴェッリルにあったとは明記されていません。

北欧神話のドワーフの国ニザヴェッリル│まとめ

北欧神話のニザウェッリルをイメージした山岳都市と鍛冶場で、ドワーフたちが武具を鍛える様子や地図、宝物を描いた見出し画像。「北欧神話のドワーフの国ニザウェッリル|まとめ」と書かれている。
  • ニザヴェッリルは『巫女の予言』に登場する
  • 原典では北方にシンドリ一族の黄金の館があると語られる
  • 地下の鉱山国家という詳しい描写は原典にはない
  • スヴァルトアールヴヘイムと同一視されるが、別名とは明記されない
  • シンドリとブロックはミョルニル、ドラウプニル、グリンブルスティを作った
  • ラグナロク後のニザヴェッリルとドワーフの運命は不明

ニザヴェッリルは、原典ではわずかな言葉で描かれた場所です。その短い描写に、ドワーフの起源や神々の宝物の物語が重なり、現在知られる壮大な鍛冶の国へとイメージが広がりました。

北欧神話を知ってからゲームや映画に触れると、黄金の館やドワーフの鍛冶場がどこから生まれたのかに気づけます。作品ごとの世界の違いも、さらに楽しめるのではないでしょうか。

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参考資料


 

 

 

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