ミズガルズは、北欧神話で人間が暮らす世界です。
古ノルド語ではMiðgarðrと書き、中の囲い、中間の領域という意味を持ちます。『スノッリのエッダ』では、神々が巨人ユミルの眉毛を使って、人間を巨人から守る囲いを作ったと語られています。その場所がミズガルズです。
最初の人間アスクとエンブラが住む場所となり、周囲の海には巨大な蛇ヨルムンガンドが横たわっています。ラグナロクでは大地が海へ沈みますが、やがて緑の大地が再び現れ、人類の物語も受け継がれます。
この記事では、ミズガルズの名前の意味、天地創造、神々や巨人との関係、ラグナロク後の世界まで、原典で確認できる内容を中心に解説します。
※当ブログ名「トネリコの庭」は、北欧神話の世界樹ユグドラシルにちなんで名づけています。記事内の神話名は、一般的な「北欧神話」に統一しています。
ミズガルズの基本情報

| 項目 | 内容 |
|---|---|
| 古ノルド語 | Miðgarðr |
| 名前の意味 | 中の囲い、中間の領域 |
| 主な住人 | 人間 |
| 作った神々 | 『スノッリのエッダ』ではオーディン、ヴィリ、ヴェー |
| 材料 | 巨人ユミルの眉毛 |
| 最初の人間 | アスクとエンブラ |
| 周囲にいる存在 | ミッドガルドの大蛇ヨルムンガンド |
| ラグナロク後 | 大地が海から再び現れ、人類が続いていく |
ミズガルズは、現在広く知られている北欧神話の九つの世界の一つとして数えられています。
ただし、『詩のエッダ』には九つの世界という表現があるものの、九つすべての名称を一度に並べた確定リストは残されていません。ユグドラシル上のどの枝にミズガルズがあるのかを示す共通の地図もありません。
世界樹と九つの世界の全体像は、以下の記事で詳しく解説しています。
世界樹ユグドラシルとは?北欧神話の九つの世界・3つの泉・動物を解説
ミズガルズという名前の意味

ミズガルズの古ノルド語Miðgarðrは、miðrとgarðrから成る名前です。
- miðr:中央、中間
- garðr:囲い、囲まれた場所、庭や領域
英語ではMidgardやMiddle Enclosureと表され、日本語では中つ国、人間界などと訳されます。
『スノッリのエッダ』に描かれるミズガルズは、人間が暮らす大地であると同時に、外側にいる巨人から人間を守る囲いでもあります。名前そのものに、世界の中心と境界という二つの特徴が表れているのです。
巨人ユミルから作られたミズガルズ

北欧神話の天地創造では、オーディン、ヴィリ、ヴェーが原初の巨人ユミルを倒し、その体から世界を作ります。
『スノッリのエッダ』の「ギュルヴィたぶらかし」では、ユミルの体が次のように姿を変えたと語られています。
| ユミルの体 | 作られたもの |
|---|---|
| 肉 | 大地 |
| 血 | 海や水 |
| 骨 | 岩や山 |
| 歯や砕けた骨 | 石や砂利 |
| 頭蓋骨 | 天空 |
| 脳 | 雲 |
| 髪 | 木々 |
| 眉毛 | ミズガルズを囲む壁 |
神々は海に囲まれた大地の外側を巨人たちへ与え、内側にユミルの眉毛で囲いを築きました。巨人の脅威から人間の住む場所を守るための囲いが、ミズガルズと呼ばれます。
ここでのミズガルズは、現代の地球と完全に同じ天体として説明されているわけではありません。海、外側の巨人の領域、内側の人間の領域という、神話上の宇宙観の中に置かれています。
ミズガルズに住む最初の人間アスクとエンブラ

世界が形作られた後、神々は海辺で二本の木を見つけ、最初の男女を作りました。
男性はアスク、女性はエンブラと名づけられます。『巫女の予言』では、三柱の神が二人に命、心や感覚、血色などを与えたと語られています。
『スノッリのエッダ』では、神々が二本の木から人の姿を作り、次のものを授けたと説明されます。
- 命と魂
- 知性と感覚
- 姿、言葉、聴覚、視覚
- 衣服と名前
アスクとエンブラはミズガルズを住まいとして与えられ、二人から人類が続いていきます。
北欧神話における人間は、完成した世界へ突然現れた存在ではありません。木から形作られ、神々から命や感覚を受け取った存在として描かれています。
ミズガルズとアースガルズの関係

アースガルズは、オーディンやトールをはじめとするアース神族の領域です。ミズガルズには人間が暮らし、アースガルズには神々が暮らします。
『スノッリのエッダ』では、神々が地上から天へ架けた橋がビフレストだと説明されています。人間の目には虹として見える橋です。
ビフレストは強く巧みに作られていますが、ラグナロクでムスペルの軍勢が渡ると崩壊します。橋の天側には、番人ヘイムダルが住むヒミンビョルグがあります。
ミズガルズとアースガルズを上下に並べ、一本の虹の橋で直結させた図をよく見かけます。これは神話の関係を理解しやすく整理した図です。原典には、九つの世界全体を一枚に配置した共通地図はありません。
アースガルズについて詳しく読む:
ミズガルズとユグドラシルの関係

ユグドラシルは、枝を世界全体へ広げる北欧神話の世界樹です。現在の解説では、ミズガルズはユグドラシルの中央付近に描かれることが多くあります。
しかし、『詩のエッダ』や『スノッリのエッダ』には、ミズガルズが特定の枝の上にあると明記されていません。
原典から確認できるのは、ユグドラシルが世界全体に広がること、ミズガルズが人間の領域であること、神々・人間・巨人の領域に境界があることです。
九つの世界を描いた現代の図は、複数の詩や物語を整理した一例として見ると分かりやすくなります。
ミズガルズを囲む大蛇ヨルムンガンド

ミズガルズの周囲に広がる海には、ヨルムンガンドが横たわっています。ロキと巨人アングルボザの間に生まれた子で、フェンリルとヘルのきょうだいです。
オーディンによって海へ投げ入れられたヨルムンガンドは、やがて大地全体を取り巻き、自分の尾をくわえるほど巨大になりました。そのため、ミッドガルドの大蛇とも呼ばれます。
ヨルムンガンドと最も深く関わる神が雷神トールです。
トールが巨人ヒュミルと釣りへ出た物語では、牛の頭を餌にしてヨルムンガンドを海面まで引き上げます。両者の決着はつかず、最後の戦いはラグナロクへ持ち越されます。
ヨルムンガンドの誕生、トールとの釣り、ラグナロクでの戦いは以下の記事で紹介しています。
ミズガルズを守る雷神トール

『グリームニルの言葉』では、トールがミズガルズを力強く守る神として語られています。
トールはミョルニルを持ち、巨人たちと何度も戦います。物語の舞台はミズガルズだけに限られませんが、外から迫る混沌の力に立ち向かう姿から、人間の世界を守る存在として理解されてきました。
一方、旧記事にあった神々がミズガルズの人々へ農業や技術を教え、生活の発展を支えたという具体的な説明は、エッダの記述からは確認できません。
ミズガルズと神々の関係を読むときは、個々の神話に描かれた出来事と、後世に加えられた一般的なイメージを分けて見る必要があります。
ラグナロクでミズガルズに起こること

ラグナロクが近づくと、長く厳しいフィンブルヴェトが訪れ、人間の世界では争いが広がります。
やがて大地が揺れ、ヨルムンガンドが海から陸へ上がることで海水が押し寄せます。ムスペルの軍勢を率いるスルトは世界へ火を放ち、大地は海へ沈みます。
最終決戦では、トールがヨルムンガンドを倒します。しかし、トールも大蛇の毒を受け、九歩進んだところで倒れます。
この破壊で物語が終わるわけではありません。海から緑の大地が再び現れ、リーヴとリーヴスラシルという二人の人間が生き延びます。二人の子孫から、次の時代の人類が広がっていくとされています。
ラグナロクを生き残る人間と神々は、以下の記事で整理しています。
ラグナロクの生き残りは誰?人間と神々、ニーズヘッグの解釈を整理
FF7やゲームに登場するミッドガルとの関係

ミズガルズや英語表記のMidgardは、現在のゲーム、映画、小説などにも使われています。
『ゴッド・オブ・ウォー』シリーズでは、Midgardが九つの世界の一つとして登場し、人間の世界を表しています。
『ファイナルファンタジーVII』には、巨大都市ミッドガルが登場します。日本語ではミズガルズとミッドガルで表記が少し異なりますが、どちらもMidgardを思わせる名称です。
『ファイナルファンタジーVII』のミッドガルは、魔晄エネルギーを使う架空の都市として独自に作られています。今回の確認では、名称の由来を明記した公式資料を見つけられませんでした。そのため、北欧神話のミズガルズが直接の元ネタだとは断定せず、名称の類似として紹介します。
J.R.R.トールキン作品のMiddle-earthも、日本語で中つ国と訳されます。Middle-earthは古英語middangeardに由来し、古ノルド語Miðgarðrと同じゲルマン語系の背景を持つ言葉です。
神話にある世界の中心、囲い、人間の領域という考え方が、時代や作品によって異なる物語へ育っていることが分かります。
ミズガルズに関するよくある質問

ミズガルズとは何ですか?
北欧神話で人間が暮らす世界です。神々が巨人ユミルの眉毛から囲いを作り、最初の人間アスクとエンブラへ住まいとして与えたと語られています。
ミズガルズの名前にはどんな意味がありますか?
古ノルド語Miðgarðrは、中の囲い、中間の領域という意味です。人間が暮らす世界の中心部と、外側の巨人から人間を守る境界を表しています。
ミズガルズは地球のことですか?
人間が暮らす地上世界という点では、現代の地球に近い役割を持ちます。ただし、エッダでは海や巨人の領域に囲まれた神話上の世界として描かれています。
ミズガルズは九つの世界の一つですか?
現在広く使われる分類では、九つの世界の一つです。原典には九つすべての名前を一度に示した一覧がないため、各世界の数え方には解釈の違いがあります。
ミズガルズとアースガルズはビフレストでつながっていますか?
『スノッリのエッダ』では、ビフレストは地上から天へ架かる虹の橋と説明されています。アース神族が使う橋で、天側の橋のたもとはヘイムダルが守っています。
ミズガルズを作った神は誰ですか?
『スノッリのエッダ』では、オーディン、ヴィリ、ヴェーに当たるボルの息子たちがユミルの体から世界を作ります。ユミルの眉毛を使って作った人間のための囲いがミズガルズです。
ミズガルズはラグナロクで滅びますか?
ラグナロクでは大地が海へ沈み、スルトの炎が世界を包みます。その後、緑の大地が海から再び現れ、リーヴとリーヴスラシルの子孫から人類が続いていきます。
北欧神話の人間界ミズガルズ|まとめ

- ミズガルズは北欧神話で人間が暮らす世界
- 古ノルド語Miðgarðrには中の囲い、中間の領域という意味がある
- 神々がユミルの眉毛から巨人を防ぐ囲いを作った
- 最初の人間アスクとエンブラが住む場所として与えられた
- 地上と天には虹の橋ビフレストが架かる
- ミズガルズを囲む海には大蛇ヨルムンガンドがいる
- ラグナロク後は大地が再び現れ、人類も受け継がれる
- ユグドラシル上の正確な位置を示す共通地図は原典にない
ミズガルズは、人間が暮らす大地を表すだけの名前ではありません。巨人の領域との境界、神々が与えた命、世界を取り巻く大蛇、終末後に続く人類の物語が重なる場所です。
原典で語られる範囲を知ると、ゲームや物語に登場するMidgardやミッドガルの世界観も、さらに深く楽しめると思います。
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執筆時の参照資料
- 『スノッリのエッダ』「ギュルヴィたぶらかし」英訳
- 『詩のエッダ』「巫女の予言」英訳
- 『詩のエッダ』「グリームニルの言葉」英訳
- University of Texas at Austin, Old Norse Online Dictionary:miðgarðr



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